今月の一言 2017年4月

 今年も実家の池にヒキガエルが産卵にやって来ました。例年は、3月の彼岸前には一斉に集まりますが、今年は寒い日が続いたため、10日程遅くなりました。個体数も去年と比べて少なく、去年子蛙として旅立って行ったほとんどが、親となって戻って来ることができなくなったことになります。2月のまだ寒さがピークの頃、畑で草むしりをしていると、目の前の土がもこもこと動き出し、冬眠中の蛙が出てきました。まだ顔を出すのは早すぎるので、穴を掘って土をかぶせました。後でその場所に戻ると、蛙の姿は消えていました。一度出てしまったので、引っ込みがつかなかったのでしょうか。  ヒキガエルたちは、親蛙としてやって来る時も、子蛙として出て行く時も、必ず夜間を選びます。昼間はトビなどの猛禽類やカラスが上空から襲ってきます。しかし、夜も安心できません。フクロウや蛇、そしてハクビシンやタヌキなど、時を選ばず天敵だらけです。ここ数日、近所でタヌキを見かけることがあったので、産卵期に蛙があつまることを知っているのかもしれません。食物連鎖の上位に立つ生き物が、下位の生き物を餌にして生きていくことは自然の摂理です。  産み付けられた無数の卵が、来月になると孵化してオタマジャクシとなり、やがて脚が生えてきて、来月になると親と同じ形のミニチュア版の蛙となり、ある日、一晩で一匹残らず池を飛び出し、命懸けの旅に出て行きます。この中に、来年親となって再び戻って来る蛙が何匹いるでしょうか。多くの天敵から身を守るため、少しでも見つかる確率の低い夜間(今までの記録だと新月)を移動の日に選ぶことも、生き物が子孫を残すための知恵なのでしょう。  蛙たちに比べると、人間が生きて行くのはあまりに手間と時間がかかります。子蛙たちは誰の助けもなく、たった2ヶ月で世の中に出て行きます。本能という生きていく術だけを持った孤独な戦いです。その反面、人間は誰かの助けを借りて生きて行かなければなりません。どちらが幸せなのでしょうか。

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