今月の一言 2015年10月

 私は春と秋が好きではありません。春は杉花粉さえなければ好きなのですが、秋はどうしても好きになれません。暑い夏が終わり、虫の音が聞こえ始めると、何となく寂しくなってくるからです。秋は、夏に比べていつの間にか日が短くなってきて、まるで暦に合わせたように彼岸花が咲き出し、辺りからほのかにキンモクセイの花の香りが漂い始めると、まさに秋の舞台の幕開けです。やがて木々が色づき始め、冬の準備が整います。  私が今まで生きてきた中で、転機を迎えたのが全て秋でした。よく言えばドラマチックですが、演じている本人にしてみれば必死です。迷い、そして悩みながら出口を探そうとするのですが、なかなか見つかりません。ドラマの終わりには、台風のように激しい風雨にさらされ、大きな傷跡をただボーッと見つめる自分がいるだけです。  私は年に一度、必ず観るアメリカ映画があります。『風と共に去りぬ』です。南北戦争前後のアメリカ南部を舞台に、マーガレット・ミッチェル原作のものを映画化したものです。ヴィヴィアン・リーが演じる主人公のスカーレット・オハラが、戦争に翻弄され、そこから這い上がっていく強い女性を好演しています。1939年の作品ですから、76年も前のものであり、日本が日中戦争の泥沼の状態にあった時期の映画です。日本が国を挙げて戦争準備をしている最中、あれだけの映画を製作できるアメリカという国の裾野の広さに圧倒されました。年末になるとよくテレビで放映されてきましたが、日本語の吹き替えではなく、字幕津二の原語で観るとさらに迫力が増します。  人によって苦労の度合いがことなりますが、戦争を経験していない私たちの世代では、彼らのように強く逞しく生き抜くことは、決して真似ができません。彼らが経験したことに比べれば、私たちの苦労も大したことはないのかも知れません。

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